日本看護実践事例集積センターの構想

 

はじめに

 戦後60年,さまざまな社会的要因や医療技術の進歩の影響を受けて,看護もまた多様な変化を迫られて今日に至っている。とりわけ,医療費の削減を具体化する方策の一つとして,在院日数の短縮が施設規模の如何を問わず経営上の課題となってからは,熟慮した看護そのものの実践を困難にし,高齢者,重症者の増加は,看護師らの達成感を低める結果ともなっている。

 一方,看護の高等教育化は急テンポで進み,ついに 4年制大学は150校を超える勢いである。科学的根拠に基づく看護実践,看護実践のエビデンス探索研究などが進む傍ら,看護技術教育の低迷による新人の実践能力の低下は,年ごとに臨床現場への適応を遅らせている。

 以上のような現実を直視しつつ,過去から現在までの多くの諸先輩らが困難な条件のもとで実践し,経験を重ねてきた事例は膨大なものになることは申すまでもないことである。加えて, 100万人を越える我が国の看護師らによる現在進行中の看護実践の量も膨大であろうし,日々職場毎に行われているミニカンファレンスや事例検討会等で論議されている事例の行く末を考えると,その量の膨大さとともに,1回限りで捨て去られる運命にあるものも少なくないであろう。そこで,これらの事例を蒐集し,分類整理することによって戦後50年のわが国の看護実践の構造が明らかになるのではないだろうか。

 国際的な動きとしては, NANDA,NOC,NIC,ICNPなどの看護実践に関する共通用語開発の流れがある。共通用語の開発自体は,差し迫った課題であるが,NANDA,NOC,NICという別個に検討作業を進めたものを改めてリンケージするような,よく理解できない複雑な作業をすすめる動きがあり,臨床的,実践的立場からはその労苦は無駄ではないかとさえ思われる。その一方で,clinical narrative(臨床体験談)とその記述を進める動きもベナー博士らによって進められようとしている。

 そこで,過去に東京看護学セミナーが看護実践の技術化の1方法として行ってきた事例検討の方法をふまえて,(1) 雑誌,著書等に記載されている事例を収集し,(2) 現在進行中の事例検討やカンファレンスで出された事例の収集をはかり,事例毎に命名して分類する作業を提案するものである。

 

日本看護実践事例集積センター長
 川嶋みどり
 Kawashima Midori

 
所属
 日本赤十字看護大学名誉教授/
 健和会臨床看護学研究所所長





















 




組織名:日本看護実践事例集積センター
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